女に興味はない。
だが、アデルが初めて恋したこの娘には、興味を持った。
それは、欲しかった玩具を手にした他人への無意味な羨望にも似ていた。
「私にもその素直さを、分けてくれませんか……?」
口移しで。
妖しく囁けば、ルイは顔を青くし身を引こうとした。
「は……!?」
ルイの前に立ったジョシュアは彼女の腕を引き、椅子から立ち上がらせた。
そして、バランスを失った身体を自分の腕の中へ収めると、ルイの両頬を包むように手を添える。
「ジョシュアさん、嫌っ!」
ゆっくりと顔を近付けるジョシュアの意図を察し、顔を背けようとしたが、ジョシュアにしっかりと固定され逃げられない。
「キスの一つや二つ、別にいいでしょう?」
減るものではありませんし。
そう続けたジョシュアに対し、ルイは動かない首を横に振った。
「嫌です。私は、アデルさんでないと、やです……」
アデルも似たようなことを言っていた。
小さな手で、懸命にジョシュアの手を剥がそうとするルイ。
触れる手のひらからわかる、ルイの手の中のいくつものマメ。
自分も同じようなマメだらけの手をしていたことを思い出し、親近感が湧く。