「しかも貴方は、折角追い出してもこうして帰ってきちゃう」

「呼び出したのは上の奴らだ」

「でも、そうなるように仕組んだのは貴方」

見透かしたように笑い、ノルンは声を潜める。

「……アデル。貴方、これからどうするつもり?」

「……」

アデルは手の中のカップに口を付ける。
冷めても美味しい紅茶だったので、行きつけの店にしようかと本気で悩んでしまう。

「……内側から腐敗した貴族たちを倒せないなら、どうするべきだと思う?」

質問の形を取っていたが、アデルの言葉はノルンへの問い掛けではなかった。
薄い笑みを浮かべたアデルには、もう答えが決まっている。

シェーダ国をより強固なものにするために、アデルは現在の貴族たちが努力もせずに裕福な暮らしをするような世の中は変えねばならないと考えていた。
そのために、新兵育成に力を入れて。
本当は使わずにいたかったザカルドの弓を取り、自身の名を強めるために利用した。
高い地位を得るに相応しい実力と知名度を、どんな手を使ってでも手に入れたかった。