アデルはため息を付き、残りのベーグルサンドを食べ終えると、ティーカップを手に持ち手をいじった。

「今回の制圧軍で、俺の部下が少なく新兵が多いのは嫌がらせの一つかと思っていたが」

「あら、それはただの嫌がらせよ」

何か策があってのこと、そう思い口を開いたアデルへと、軽いジャブを決めるような鋭さでノルンは微笑んだ。
これには、呆れるしかない。
意味もなく、ただアデルが気に食わないからと部隊を編成した騎士団長の愚かさには笑うことも出来なかった。

「貴方は今、ザカルド様の金の弓を持ち、その影響力には目を瞠るものがあるわ」

元々、平民に味方することも多く、山賊討伐の任も進んでこなしていたアデルは、民からの人気が高い。
絵画にもなり得る整った容姿は童話の王子様を連想させ、それでいて性格は気さくなものだから接しやすい。
エルクをよく知らぬ民でもアデルに対して好感を抱いているから、そんな彼が心から敬意を抱く王は素晴らしい方なのだろうと思っていることもある。