だが、これであの時のクトラの異常に速い進軍の理由はわかった。
アデルの隊と離れ、戦力を削りたかったのだ。

「最後のページが最新か?」

「えぇ。やっぱり貴方、大層気に入られてるようじゃない」

「……」

アデルは肩を竦めると、ノルンへ紙束を突き返した。
シェーダ国の開戦を誘ったのち、なるべくアデルを王都から遠ざける。
エルクに忠言を繰り返す者を離し、エルクを操ろうという魂胆だ。

(クトラごときが人選に口出し出来るわけがない。……こっちにも裏切り者がいるということか)

協力すれば、今よりも高い地位をデモンドに用意する。
そんなところだろう。

(協力者は、騎士団長で確定だな)

クトラを強く勧めたのも、騎士団で部隊編成を行うのも彼。
騎士団長の力が借りられれば、クトラとしてはやりやすいことこの上ないだろう。