後は娼館の娘たちが言葉巧みに密偵たちから話を聞き出すのだ。
酒の力、自身の色香、時には弱い自白剤も利用して。

「……そうやって手に入れた情報だから、信憑性はあるけど武器にはならないわ」

「いや、信憑性だけでも十分助かる」

物的証拠まで持ってきてもらえれば、それ以上のことはないが。
高望みは出来ないと、アデルは紅茶を口にした。
味もアデル好みであり、本当にいい店だ。

「とにかく、今回の戦の構図は裏でデモンドが手を引き、ありもしない嘘で同盟を引き裂きメルディとシェーダを潰し合うことよ」

「やられると腹が立つが、いい策だな」

アデルはあっさりとデモンドを褒め、不快さに眉をしかめた。
メルディ・シェーダ間の同盟は強く、二国がいる限りオネストにも手が出せない。
シェーダを揺さぶりメルディにけしかければ、反対側からメルディを襲うことも可能だ。

「シェーダを揺さ振る時期も的確だな」

イアンとミーナが婚約を発表し、エルクが精神的に不安定になっている。
その時を、狙ったのだ。

エルクは見た目には平常を貫いていた。
だが、完全に心から祝福するにはエルクは幼く、時間も必要だったのだ。