「我々の目的はデモンドと協力関係にあるメルディ軍を倒し、同盟国の平和を守ること。つまり、最終的にはメルディ王国を倒しメルディの領地は我々が支配することになるのでしょう?」

アデルは大臣や宰相が頷く姿を確認し、やや口調を強めた。

「ならば、メルディの国民を不用意に傷つけるべきではありません」

「彼の言葉には一理ありますな」

豊かな白髪と髭を蓄えた高齢の大臣の一人が頷いた。
この場に並ぶ大臣の中では最年長であり、アデルとの年の差は半世紀分はある。

「我々がメルディの民を統治する立場となったときに、虐げられた記憶があれば素直には従わないでしょう」

貴族としての伝統を重んじる節のある彼らは、最年長の大臣の言葉に、反論が出来ずにいた。
ましてや、それが正論であるなら尚更に。

「……ただ、何も考えず破壊の限りを尽くしメルディ国を制圧しろと命じられればそうしましょう。ですが、その先はきっとありません」

騎士団長は苦虫を噛んだような顔をし、エルクを窺い見た。
エルクは変わらず冷たい瞳で、口角を吊り上げた。