そして、何を言っても通じないとわかっているアデルは彼らの言葉を無視し続けた。
アデルが話をしたい相手は、王座に座るただ一人。
その一人が口を開くまで、アデルは懸命に耐え続けた。

反論のないアデルに、納得したのだろうと勘違いした騎士団長は、王座のエルクを振り仰いだ。
エルクは冷たい瞳でアデルを見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「何か言うことはないのか?」

そこで初めて、アデルは顔を上げてエルクを見上げた。
常に何かを睨むような瞳。
ライラの不機嫌な表情とは違い、恨みの交じった視線に、アデルは一瞬息を詰まらせた。

「……もはや、これ以上の進軍は不可能かと思われます」

王座の間に、不穏な空気が駆け抜けた。
アデルの言葉に騒めく中、エルクは表情を変えずにアデルを見下ろしている。