「アデルが戦争を止めたいのなら、メルディ軍は助力を惜しまない」

ライラは警戒心を解かずマントに手を忍ばせたまま、言った。
これは、真実である。
メルディ軍の進軍の目的は戦争ではなく、和解なのだから。

ジョシュアは交互に二人へ探るような視線を向けると、人の悪い笑みをルイへと向けた。

「貴方のような小娘では、アデルの役に立つとは思えませんが」

「私も、自分がアデルさんの傍にいけば何かが変わるだなんて大層な事は思っていません」

「それなら、会う意味はないでしょう?」

「それでも、話したいんです」

断言するルイには、退くつもりはさらさらなかった。
ジョシュアを信用しているわけではない。
だが、今ルイとアデルを繋ぐものは目の前の食えない男なのだ。

「アデルにとって、他者は駒です。今の貴方は愛弟子ではなく、メルディの近衛兵という強力な駒ですよ。わかっていますか?」

小馬鹿にした口調は、ルイを腹立たせたいだけだ。
ルイは、小さく微笑んだ。
彼女にとって、他人を試すような人は、師匠一人で十分だった。