立ち上がったライラは、再び弓を構えたルイの矢筋の邪魔にならないように、彼女の前に立った。
いつでも逃げ出せるようにと、マントの中の試験官に手を伸ばして。

「敵将の部下が、何の用ですか」

剣を突き付けるかのように温かみのないルイの言葉に、ジョシュアは残念そうに肩を落とした。

「冷たい言い方ですね。同じ人を好きになった同士というのに」

ジョシュアの言葉にルイは片眉を上げた。
のんびりとした口調の中にある鋭さが、ルイの警戒心を刺激する。
アデルの腹心であるのが事実ならば、あえてルイを刺激しているということも考えられるが。

「……同じ人を好きになる?」

ライラが視線だけを動かし辺りを探っていた。
それに気付いたルイは、ジョシュアの気を散らそうと適当な質問を飛ばす。
だが、それは逆にルイの平常心を奪われる結果を導くことになってしまう。

「アデルのことですよ。貴方も彼を好きでしょう?」

「……は?」

両手を挙げたままにこにこと笑うジョシュアに、張り詰めていたルイの気が一瞬緩む。
だがすぐに矢を握り直すと、探るような視線をジョシュアに向けた。