食えない笑みを浮かべた青年が、弓を手にしたまま両手を挙げて森の闇からぬっと出てくる。
すらりと長い手足を持つ長身の青年は、自ら光っているかのように淡く輝く白銀の髪と、妖艶に細められた紅い瞳を持っていた。

「気配を察することは苦手だとお聞きしていましたが」

「止まってください」

冷たいルイの声に、青年は二人から二十メートル程離れた位置であっさりと足を止める。
シェーダの騎士団に配給されている鎧を身につけている青年に、二人は警戒心を強めた。

「弓を置いて」

青年は抵抗の意は見せず、ルイの言葉に従い弓を足元に置こうと腰を落とした。

「足元ではありません。手足の届かないところに置いてください。あと、矢筒も下ろして」

素直に従っていた青年は、驚いた様子でルイを見上げる。
そして、柔らかく紅い目を細めた。

「アデルの影響を、しっかり受けていますね」

ルイは青年の言葉の意味を理解しても、険しい瞳で見つめ続けた。