ライラは自ら戦を望むタイプの人間ではないが、目の前に戦があると相手の戦い方を楽しむ節があった。
今も、不謹慎ではありながら、アデルの対応が楽しみに思っている。

「日が傾き出すと、一気に寒くなりますね……」


ルイはしきりに自分の身体を擦っている。
ライラは身体を縮ませているルイにマントを貸そうとしたが、自分のマントには武器となる薬品を潜ませていることを思い出し、脱ぎ掛けた手が止まる。
どうしようかと思案しているライラを、突然ルイが押し倒した。

驚きに目を丸くしたライラは、先程立っていた位置の真横を一本の矢が通り過ぎるのを見た。

「誰だ!」

ルイが声を張り上げ、素早く自身の弓を構えると、矢が飛んできた方向へと、弓を引き絞った。
ライラも身体を起こし、森の中に目を凝らす。
僅かな人の気配に集中していると、気配の主はあっさりとその姿を現した。