一際強い風が吹き、ルイが身体を震えさせた。

「明日にはノルダ砦へ向けて出発する。戻るぞ」

マントを翻しメルディ軍のテントへ戻ろうとするライラに続き、ルイも山へ背を向けた。
昼過ぎに到着したメルディ軍は、近くに野営の準備をし、ゆっくりと休憩をすることにしたのだ。

もしもノルダ砦に見つかったとしても、近くに来ていることを知らせることを知らせるいい機会である。
それに、ノルダ砦の食料は限界まで達しているはずだ。
二、三日のうちに、工作部隊が補給路を断つ手筈になっている。

食料不足で敵が近付いている。
それをシェーダ軍に実感させるためにも、隠密に進む必要はないのだ。

明日に進軍したメルディ軍は、素早くノルダ砦を囲み逃げ道を塞ぐ。
後はアデルと同じように降伏を呼び掛けるだけだ。
編成はイアン率いる近衛兵軍。
デモンド国境警備の十分の一にも満たない数だったが、ノルダ砦の状況と今後のシェーダ潜入を考えると十分な数であった。