「……アデルさんが何を考えているか、わかりますか?」

「……ユリアから砦の内情を聞いた限りだと、アデルは随分と上から嫌われている印象を受ける。この時期に上にとって疎ましい人物とは、おそらく戦争に反対する人間だろう」

「戦争を止めたいのでしょうか……」

「そう思いたいが……よくわからないのが本音だ」

ライラは首を横に振ると、舌打ちと共に不満を吐き出す。

「何か考えがあるなら、僕らに協力を求めればいい。あいつが何も言わないから、僕があいつの考えを読んで動いてやらないといけない。面倒だ」

眉をしかめて不愉快さを隠さずに表したライラ。
その姿に、ルイは小さく笑った。

「ライラも、アデルさんが好きなんですね」

「は?」

「アデルさんを心配しているんでしょう?」

ライラは弾かれたように深緑の瞳を丸くし、まばたきを繰り返した。
予想外の指摘を受け固まったライラに、ルイは柔らかな笑顔を浮かべ続ける。

「何かを考えていることはわかります。でも、アデルさんは人に頼ることが苦手ですから、一人で戦うことを選ぶんです」

「それが、迷惑だと」

「そう、心配だから迷惑なんです」

空色の瞳に愛しさを讃え、ルイはライラよりも遠くに目をやる。