絶句するルイへと、ライラは緩く首を振った。

「たぶんあいつは、もしもメルディが他国に侵略された場合のために、考えていたんだろう」

ライラの言葉に安堵の息を吐くルイ。
同時に、やはり抜け目のない人だと感心してしまう。

「ノルダ砦が、シェーダから向かえば低い位置にあるだろうことまでは想像出来るが、どこに部隊をどう並べればいいかや、有利な位置などは実際目にしなければわからない」

「確かに……」

「アデルはそういったことを確認した上で、自分が攻めるならどうするかを考えておいたんだと僕は思う」

ライラもまた、シェーダ国内の砦や城に関する攻め方を考えてある。
彼の場合はいつか役立つなどという理由ではなく、単純に砦や城を見るとどうしたら制圧出来るか考えてしまう癖が付いているだけなのだが。

「アデルの策は単純で簡単だったかもしれないが、戦に簡単に勝つ奴はそれこそ才能がある奴だ」

他の人間はどう言おうと、ライラはアデルを高く評価している。
高台から囲み、逃げ道を塞ぎ、降伏へ追い込む。
簡単であっさりとした策は華やかさに欠けるが、確実に勝つという戦に求められる最高の条件を満たしている。