3月23日

奇しくもその日は
《miyu》の日記の最後の日付
つまり、20年前に
美優が病院の屋上から転落し
亡くなった日であった。

この奇妙な一致は・・・?


教授は思わず
その研究材料が
以前人の一部であった事に対し
胸の前で手を合わせた。


彼は、朝のコーヒーを
感慨深く飲み
やおら立ち上がって
白衣を脱ぎ
普段着に着替えた。


そして、
美優の残された家族
一人娘が身を寄せる
祖母の連絡先を
丁寧に手帳に控えた。

育っていれば23歳
丁度、美優の亡くなった年に
なっているはずだ。
これらの偶然を
科学で説明するのは難しい。

娘に会ってみたい、と思った。
研究の未来の為か
はたまた、個人的な興味か・・・


「しかし
実に興味深い・・」

そう呟いて研究室を後にした。