「……司?」
正面玄関のオートロックを解除して、そのまま画面の前で待つ。
暫くして、再びインターフォンが鳴った。
トークのボタンを押して、「開いてる……よ」と声を絞り出した。
トーク画面を消して、再びベッドに沈みこんだ。
玄関の開く音、廊下を歩く足音、部屋のドアが開く音……。
次には、「大丈夫?」という司の声が聞こえた。
「ん……しんどいけど、多分……大丈夫」
「そっか、ごめんね」
「……何が?」
「あの日、雨に濡れたからでしょ?」
額に司の手が乗る。
少し冷たくて気持ちいい。
「いや、元々ちょっと体調悪かった気がするから、司のせいではないよ」
「そう? でも、無理したらダメだよ。頼ってくれていいからさ」
頭を撫でてくれながら、司が少し微笑んだ。
心地よさにあたしも笑顔がこぼれる。その言葉に頷いて返事を返した。
「ちょっと何か作るから、キッチン貸してね」
額から手を離し、司が立ち上がってキッチンへと向かった。
優しいね……。
包丁の小気味良い音を聞きながら目を閉じる。
そのリズムが心地良い子守唄のようで、あたしは眠りに落ちた。
肩の辺りを軽く叩かれる感覚がして、あたしは目を覚ました。
「寝てたとこごめんね。ちょっと早いけど、夕飯できたからさ。食べて薬飲もう」
「ありがと」
上半身を起こして、司が持っている丼を受け取った。