「あたしはプールでしか泳いだことないから、海で泳ぐ感覚はわかんないけど、気持ち良さそうだね」
「そうなの? なら、一回は泳いでみたらいいよ。楽しいから」
「うん、機会があれば泳いでみる」
あたしの言葉に司は頷いた。
「でさ」
言葉を切って、司がこちらを見た。
「今日ありがとうね」
「うん」
「いやー、歩くっていうのもいいもんだよね。心が落ち着く」
伸びをして司が呟いた。
「ねぇ、ちょっといきなりでビックリするかもしれないけどさ」
「うん、何?」
「よかったらさ、これから一緒にいてくれない?」
「どういうこと?」
意味がよくわからなかった。
この後どこかに行くのか、それとも帰るまでの時間のことなのか。
視界の端に映る景色が少し明るくなったのが分かった。
雨が止んだのか。
西日の綺麗な光の筋が足元を照らした。
「まぁ、なんて言うかな……」
上を向き、司は頭を掻く。
少しだけ考えて、言葉を繋げた。
「うーん、簡単に言うと好きってこと」
「へ?」
「間抜け顔だよ」と司が笑う。
「多分、初めて見たときから気になってた。紗雪は酔ってたけど、綺麗な子だな、って思った。それから暫くして、会えないなーって思ってた時に、祐輔に誘われて飲み会行ったら途中で来てさ、一緒に飲んだよね。その後に久しぶりにメール送ってみて、メールするようになって、あぁ、やっぱ好きだなーって思ったんだ」
淡々と司が言葉を繋げていく。目を見て話してくれている。
逸らすのも失礼なので、吸い込まれるようにあたしも司を見つめた。
「だからさ、さっきも言ったけど、よかったら、これから俺の傍にずっといてくれない?」