暫く、とりとめのない話をして歩き続けた。

流れ着いている流木はどこからきたんだろう、とか、雨のせいで洗濯物が乾きにくい、とか、そんな話をして笑っていた。


「この前の花火の写真、綺麗だったよ」

「でしょ。あれがベストショットだった」

「誰と行ってたの?」

「同学の友達。そこ出身のやつがいたから」

「彼女なんじゃないの?」と脇腹を小突いた。

自分で言っておきながら、少し胸が痛んだ。

司は笑いながら、「男友達と」と返事をした。

その言葉にほっとしている自分がいる。
司が携帯を取り出して、ほら、と画像を見せてくる。

そこに写っていたのは5人の男子が屋台の前でポーズをとっていた写真だった。

「信じた?」と言う司の言葉に頷いた。


暫く歩くと、屋根のついたベンチのある広場のようなものが見えてきた。

ここで新歓時期に硬式テニスのバーベキューに参加した。それも懐かしいことに思える。


「あそこ、座ろっか」


司の言葉に頷いて、二人でベンチに腰を下ろした。

傘を畳んで、横に置く。

それからは少し無言の状態が続いた。

それでも息苦しいような沈黙ではなく、むしろ心地良いものだった。

このままずっといても全く苦ではない。そう思えた。


「ねぇ」


先に口を開いたのは司だった。


「海っていいよね」

「うん」

「なんか、落ち着くんだよね。考え事とかするとよく防波堤とかで寝転がってた。地元にいたときは。綺麗な海ではなかったけど、夕焼けとかは綺麗だった」

「そうなんだ」

「そろそろ泳ぎたいなー。浸かってるだけでもいいけど、やっぱり泳ぎたい。田舎出身だからかな?」


笑いながら司が続ける。