デスクの椅子に腰掛けた俺を、確かめるような眼差しで見つめた男性は、一礼してから折り畳み式のパイプ椅子に座った。



その動作や、きちんとアイロン掛けされた藍染のハンカチ、毛先の切り揃えられた髪型からは、育ちの良さを感じる。



額から首筋をなぞるように、吹き出る汗をハンカチで押さえる男性は、背筋を伸ばして室内に視線を流浪させていた。



角の溶けたような黒縁の眼鏡は、その視線に付いていくのがやっとのように見える。



見た目は何処ぞの営業マン風。少し突き出た腹やその他の風貌は、実年齢より老けて見えるだろうが、良い所三十五、六ぐらいと見た。



「そんなに緊張なさらず、アイスコーヒーが届いたら話しを始めさせて頂きますので。」