普段通りデスクにコーヒーを置くマスターは、言葉を発さずに目でどうするのかというサインを送ってくる。



「はい、営業中です。アイスコーヒーで宜しいですか?」



鋭角に切られたツーブロックの毛先は、少しの汗を含んで重そうに頭の上に乗っているという状態。



「あ、すいません。」



座る場所を見つけられず、事務所内に視線を泳がす男性は、グレイのスーツの尻ポケットから、きちんとアイロン掛けされたハンカチを取り出しながら答えた。



[トレイン]のマスターにアイスコーヒを頼み、壁際に畳んで置いていたパイプ椅子を準備する。