あたしは、涼の笑顔を見て確信した。
もし、さっきのが幻覚じゃあなかったら涼は人間じゃない。
だけど、現に目の前にいる涼は普通の人間だ。
どこからどう見ても人間。
「…なぁ。りんか」
まだ寝起きの涼が小さな声であたしを呼んだ。
あたしが涼の方を向くと、いつもとは違う笑顔を浮かべていた。
何か企んでいるいたずらっ子のような笑顔。
「さっき、俺の牙みただろ?」
ニヤリと笑うと、さっき見た牙が出ていた。
あたしはびっくりして言葉が出ない。
「俺、ヴァンパイアだから。」
悪い夢を見ている気がした。
あのあと涼に
「このことは誰にも言うな」
って言われて、そのあとはどうやって帰ってきたのかわからない。
涼がヴァンパイア?
何それ、冗談?
あたしは、ヴァンパイアなんて物語の中だけにしか存在しないと思ってた。
だけど、あたしは涼の牙を見ちゃったわけで…
「ヴァンパイア…好きになっちゃったんだ、あたし」
なかなか現実を受け入れられないあたし。
夢だったらいいのに。
あたしは枕に顔をうずめた。
何も考えないように目を強くつぶった。
現実逃避したくて。
そのうちあたしは、深い眠りについた。
「りんかー?起きなさいよー?」
お母さんが部屋まで起こしに来る。
あたしの体はいつも以上に重かった。
昨日のことが夢じゃないってわかったから。
涼からのメールを見て、夢だと思っていたあたしの気持ちは簡単に崩れた。
『絶対言うなよ?
言ったら許さない。
じゃあ、また学校で~♪』
あたしは別に周りになんか言わないし…
涼との接触をなるべく減らすために早めに家を出た。
それなのに…。
「よぉ!りんかも今日は早いんだな!」
校門の横に涼が立っていた。
「あ、おはよう。今日は早く起きたんだ。」