あたしはいつものように、ギリギリの時間に校門をくぐった。
相沢りんか。
高校1年生。
あたしは遅刻の常習犯。
昇降口ではいつも通り、生徒指導の先生がたくさん。
「おっす、今日も生徒指導やってんなー」
いきなり隣に現れたのは、同じクラスの村上涼。
「涼、おはよ。さすがに毎日いられるときついよねー」
涼もあたしと同じように、遅刻の常習犯。
よく2人で説教をされる仲。
時間まであと3分。
あたしたちは全速力で走った。
いや、涼はあたしに合わせてくれてたみたいだけど。
そんなあたしたちをみて驚く先生たち。
そりゃそうだ。
今まではどんなにギリギリでも、呑気に歩いてたんだから。
あたしもなんで走ってるのかわからなかった。
涼が走り出して、思わずつられてしまっただけ。
1分前に靴を履き替え、20秒前に教室に着いた。
皆、それはそれは驚いていた。
いつも決まって2分遅刻するんだもん。
チャイムと同時に席につくなんて何年ぶりだろう。
きっと小学生のときのチャイム着席強化月間が最後だ。
担任は教室に入るなり、目をまんまるくさせてあたしたちを見た。
「お前ら、やればできるじゃないか!」
担任の目にはうっすら涙が浮かんでいた。
涼は聞いてるふりをして窓の外に目線を移した。
その横顔はすごく綺麗だった。