その時ちょうど稔は化学室の前にいて、中を覗いていた。



――中覗いて何やってんだ?


しばらく表情がなかったその顔は、ふっと笑った。


その瞬間、何かが変わった。



俺の中の何かが――。




今思えばあの笑顔は好きな人にだけ向けられる、特別なモノだった。