「さっきは急にどうしたんです?」
人気ない廊下を手を引いて歩く。
部活をしていた生徒たちも帰路に着き始めていた。
「由貴先輩?」
由貴先輩は黙ったまま何も言わない。
歩みを止めて振り返る。
俺と目を合わせようとしない。
「ちゃんと話してください。じゃないと、心配するじゃないですか。」
「心配……」
その単語に反応して、伏せていた長い睫毛が上がった。
「する?稔くんが?」
「当たり前です。俺を何だと思ってるんですか?」
「……ごめん」
「謝るぐらいなら理由を言ってください。」
しょぼんとした顔は、怯える小動物に似ている。