さすがに往復は足にくる。


化学準備室の前で呼吸を一つ。

そう言えば化学室に直也の姿はなかった。
たぶん帰ったんだろうけど…

ちゃんと謝らないとな。



それより今は――。


ドアノブに手をかけて、ゆっくり回す。



「―――!」
「……先輩、やっと見つけましたよ。」


中には眉尻を下げた由貴先輩と、やっと来たかと呟く志原がいた。


俺が一歩近づくと先輩は志原の後ろに隠れた。


反射的に志原を睨む。



「おいおい。俺を睨むな、巻き込むな。」
「じゃあ、そこよけてもらえますか?」


ったく…と志原は飽きれ気味に言い、先輩の腕を掴むと俺の方へ突き出した。



「うわっ!?ちょっ……先生!」
「言ったろ、俺を巻き込むなって。二人で解決しろ。」
「そんな……」



俺は無言で一礼して、先輩の手を引いて準備室を出た。