三年六組――その教室に先輩の姿はなかった。
いない……。
周辺にそれらしい影もなかった。
屋上、裏庭、音楽室、美術室、家庭科室………思い当たる場所は全部探してみた。
でも先輩はどこにもいない。
あー、もう……
どこ行ったんだよ。
あとは…
まさか俺の教室か?
望み薄だけど行ってみるしかない。
一年の教室は一階に並んでいる。
俺は階段を勢いよく駆け下りた。
一年四組の教室のドアを勢いに任せて開ける。
「あれ?早坂じゃん」
教室に先輩の姿はなく、代わりに川瀬が机に腰掛けていた。
「そんな息切らしてどうした?」
「いや……お前一人か?」
「うん。人待ってんだー。」
ひょいっと川瀬は机から降りる。
「川瀬、由貴先輩見なかったか?」
「見てないけど」
「そっか………」
俺は肩を落とす。
「何?喧嘩?」
「いや………喧嘩じゃないんだけど。探しても見つからないんだ。」
「校内にいるわけ?」
「それは間違いない。」