これでも年上、と腕の中の先輩は主張する。
「ふふふ、そうでしたね。」
「あ、バカにしてるでしょ?」
拗ねて尖らせた口に、唇を合わせる。
「バカになんてしてません。可愛いなって思ったんです。」
頬を赤らめた先輩を壁際に追いやる。
「由貴先輩、あまり可愛いこと言い過ぎると俺が暴走してしまいますよ?」
「…え?」
先輩の両手をとって、壁に固定する。
再び合わさる唇。
さっきとは違う、深く熱いキス。
「…ン………はや、さかくん……」
「俺の名前は稔です。」
「稔……くん」
「はい。」
ぼーっとした眼差しを向けてくる先輩は、何というか……
色っぽい!
「先輩、そんな顔されると本気で襲いますよ?」
「そんなって…どんな?」
「もっとして、って顔に書いてますよ。」
「うそ…!?」
「嘘じゃありません。」
パッと先輩の手を離す。
「これ以上やると本当に我慢できなくなるので。どうせなら邪魔が入らない場所でゆっくりと、ね?」
「…稔くんは、高校生じゃないみたいだね。」
「正真正銘、高校生ですよ。」
ちょうど良く部室のドアが開いて、直也が顔を出した。
「稔くん」
由貴先輩が俺の制服の裾を引っ張って、小さな声で
「こ、今度は我慢しなくて良いからね……!」
と言った。
当然俺は心を打たれ、直也に頭を叩かれるまで、しばらく固まったままだった。