部室にはやっぱり先輩が一番乗りだった。


「早いですね。今日は掃除当番じゃなかったんですか?」
「うん。早坂くんも早いね。」
「直也はまだ来てないんですね。珍しい…今日は休みかな?」
「…………」



うーん…やっぱり不機嫌?



「なんか嫌なことでもありました?」
「ううん。何も……」



あ、嘘下手だな。
すぐ顔に出る。


「この前まで直也が入部して喜んでいたのに、どうしたんですか?」
「………………。」
「先輩?黙ってもダメですよ。顔、見れば分かるんですからね。」



もう一押し。


「佐崎先輩?」
「……それ」
「え?」


それって言われてもな。



「佐崎先輩、ちゃんと言ってもらわないと分からないですよ。」



先輩はちょっと恥ずかしそうに目を逸らして、


「名前」

と言った。


「どうして宮塚くんは名前で呼ぶのに、僕のことは呼んでくれないの?僕は…早坂くんの恋人なのに…」
「~~~~~!」


か、可愛すぎる!!!!!!!!!

ああ、もう!
なんだこの生き物は!!


と言うか…

「名前で呼んでよかったんですか?」
「うん。もちろんだよ。て言うか呼んでほしいな。」



こんなこと言われて理性保てっていう方が無理だろ。


瞬間、俺は先輩を腕に抱いた。


「由貴先輩」
「…うん」
「もっと早く言ってくださいよ。由貴先輩」
「だって……なんか子供っぽいじゃないか。僕の方が年上なのに…」