顧問は隣の化学準備室に居座っている。

俺はノックもせず、そのドアを開いた。

中にいた先生は何やらデスクでノートパソコンと向き合っている。
夢中になっているようで、俺が入ってきたことに気づいていない。


「志原(シハラ)先生ー」
「うわっ!!早坂!」


先生は慌ててパソコンを閉じた。


「お前、ノックぐらいしろ!」
「はいはい。今度からします。」


志原先生はあまり先生らしくない。

何というか兄貴的存在だ。


「そんなに慌てて……エロサイトでも見てたんですか?学校では止めた方がいいですよ。」
「余計なお世話だ!何の用だ?」
「洗剤、ありませんか?」
「洗剤?何でまた…?」
「今日の部活動は道具の掃除なんです。使いたいので貸してください。」



何で俺が………と呟きながらも、部屋の奥からゴソゴソと洗剤を取り出してきた先生。



「仮にも顧問だからですよ。ありがとうございます。先生もたまには顔出してくださいよ。」


志原先生は肩を竦め、

「俺が行ったら邪魔だろうに。」


と呟いた。


「は?」
「邪魔だろう?俺は」


にやにやと笑う顔。

さすが教師。
見てる所は見てるな。
侮れない。


「………何の事ですか?じゃあ、失礼しまーす。」


準備室を出て、溜め息一つ。

覚えてろよ……志原のやつめ。