愛する佐崎先輩と恋人同士になった翌日。


「盗み聞きなんて悪趣味ですよ、志原先生」
「え?何のことだ?」
「とぼけないでください。バレバレなんですよ、昨日の」
「……さすがだ。いやぁ、良かったな!思いが叶って!」



肩をバンバンと叩かれた。
結構バカ力………。



「もしかして俺のおかげか?あははは」
「……………。」


確かにない訳じゃない…。



「まぁ、今回は許します。」
「許すってお前ね、」
「今後は邪魔しないでくださいよ。部活は二人で行いますので。」
「へいへい………あっ」



志原は何か思い出したように手を打った。



「悪ぃ、早坂……実は二人じゃねーんだ。」
「は?」



――コンコン

と準備室のドアが叩かれた。



「おっ、ナイスタイミング!説明する手間が省けた。入れ」
「?」



志原の合図でドアが開かれる。


「しっつれいしまーす。」


なんて軽いノリで入ってきたのは見知らぬ生徒だった。



「持ってきましたよ、入部届け。」



……入部?ってまさか……。



「早坂、コイツは宮塚 直也(ミヤツカ ナオヤ)。お前と同じ一年だ。化学研究会に入部したから。」
「どーも。よろしく」



宮塚の鋭い目は、ちょうど俺の目と同じ高さだった。



「んで、こっちは早坂 稔。二人とも仲良くやれよ。」


仲良くって……
すげー睨まれてるけど。


「よろしく」



これじゃ化学室での甘い時間は遠くなりそうだ……。