「え………」

伏せられていた顔が上がる。



「教えてください、先輩のこと。」
「僕のこと……?」
「誕生日は?」
「11月14日」
「得意な科目は?」
「化学と生物かな」
「苦手な科目は?」
「…日本史」



いつも赤点ギリギリなんだ、と恥ずかしそうに言った。



「趣味は?」
「実験」
「好きな色は?」
「えっと……白かな」
「じゃあ、……好きな人は?」


途端に先輩の口が閉じる。



「先輩は誰が好きなんですか?」
「僕は………」



泣きそうな顔で縋る先輩は可愛い。
でもダメ。
それでも先輩の口から聞きたい。



「先輩の好きな人は誰ですか?」
「早坂くんは…やっぱり意地悪だ。」
「俺だけに言わせる先輩の方が、よっぽど意地が悪いですよ。教えてください。その口で」



先輩の唇にそっと指を当てる。

あ、柔らかい……。



「僕は……」
「はい。」
「僕は……早坂くんが好き。」



最後は声が小さくて、聞き取るのがやっとだった。