見つめ合った数秒が何十時間にも感じられた。
「俺のこと、分かってくれましたか?」
「……わ、わか」
先輩は今にも泣きそうな顔で。
「――分かんない。」
「じゃあ分かるまで何度でも言いましょうか?俺の好きな人は佐崎先輩です。」
「………あの」
「好きなんです、先輩が」
「ちょっ、ちょっと待って――」
先輩が逃げ出さないように、両脇から壁に手をつく。
「分かりましたか?俺は先輩を――愛しているんですよ。」
言ってしまった。
でも後悔はない。
佐崎先輩は何も言わず、固まってしまった。
「先輩?聞いてます?」
「……………」
「佐崎先輩!」
「あっ……あ……」
パクパクと動く口は言葉を紡げていない。
「ちゃんと聞いていましたか?」
ぎこちなく首を縦に振る。
「俺のこと、分かってもらえました?」
身体を震わせ、先輩は俺の制服を掴む。
顔を伏せたまま頷いた。
「じゃあ、今度は先輩のことが知りたいです。」