俺――早坂 稔(ハヤサカ ミノル)はこの春、星隣(セイリン)高校に入学した。
「早坂ー!帰ろーぜ。」
クラスメートの川瀬 遼一(カワセ リョウイチ)がHR終了と共に、俺に歩み寄る。
「悪い、俺部活あるんだ。」
「…部活ってあの廃部同然の?」
「ちゃんと活動やってるっての」
「いや、だってな……」
「あ、じゃあ時間だから行くわ。またな」
廊下を抜けて、校舎北側。
化学室が俺の部室。
俺は化学研究会という部活、いや同好会に入部した。
そんなに化学が好きなのかって?
違う、違う。
俺が好きなのは――
化学室のドアを開けると、すでにその人の姿があった。
「部長、早いですね。」
「早坂くん」
部長こと、佐崎 由貴(サザキ ユキ)先輩。
この人が俺の入部した理由。
つまり好きな人。
あれは一目惚れだった。
今日も笑った顔が小動物みたいで可愛いな。