「…いや、…嘘では、ないから」

「え?」


小さく呟かれた声に、
振っていた手を止める。

今、聞こえなかった。何て言ったんだろう?

その思いがどうやら顔に出ていたようで、南くんはもう一度口を開いた。


「だーかーら! お前が笑ってた方が可愛いっていうのは、嘘じゃないから!」

「…え、え? え?!」

「じゃ、じゃーな!」


顔をりんごのように真っ赤にして、
南くんはズカズカと教室の違うほうへと歩いて行ってしまった。

その背中を、ぽかんと見つめる私。