誰がこんな展開を予想しただろう?
沼野高校の余裕勝ちと思われていた試合が、
こんなに接戦になっている、
しかも神楽高校が沼野高校を押している。
形勢は完全に逆転した。
そして・・・
「美優!!」
バシッ!!
美優のスパイクが沼野のコートに突き刺さり、
神楽は8点差をひっくり返し、
遂に逆転に成功した。
「やったぁー!!!」
「やったぁー美優ぅぅぅー!!!」
ハイタッチをして喜ぶ美優たち。
そしてそのまま・・・
『第一セット 25-23で神楽高校!!』
神楽高校が第一セット先取した。
「「「やったぁぁぁー!!!」」」
まるで優勝したかのように
盛り上がる神楽高校の選手たち・・・
あの沼野高校から第一セット取った!!
やった、やったよ宏大・・・
私たち、やったよ・・・
この勢いは第二セットも
止まることがなかった。
自信をつけたかのように
生き生きとプレイする神楽高校、
逆に追い込まれミスを連発する沼野高校。
そして・・・
バシッ!!
美優のスパイクが沼野のコートに突き刺さり・・・
『ピィーっ!! 第二セット神楽高校、
セットカウント2-0で神楽高校勝利!!』
「やったぁぁぁー!!!」
「おおぉぉぉー!!!」
神楽高校が見事沼野高校を倒し、
三回戦へと駒を進めた。
コート上で抱き合う美優たち、
会場からは大歓声が上がった。
やった、やったよ宏大!!
スタンドを見上げると宏大が
ガッツポーズをしながらこっちを見ていた。
私も思わず右手を高々と上げた。
やった・・・やった・・・
「やったぁー!!!」
美優は思いっきり両手を上げ叫んだ!!
私たちは勝ったんだ、
これで紗奈とやれるんだ!!
美優はハッと思い出したかのように、
紗奈がいたスタンドを見上げる。
紗奈・・・
紗奈はニコッと微笑み、
『おめでとう』っと、そう言った。
紗奈・・・ありがとう・・・
これであなたと試合ができる・・・
美優もニコッと微笑んだ。
これで神楽高校は三回戦、
双葉学園と対戦が決まった。
「やったね、まさか
あの沼野に勝てるなんて・・・」
「うん、夢見たいやなぁ。」
みんな沼野高校に勝ってはしゃいでる。
「次も勝つで。」
「えっ!?」
「次も勝つ!!」
「美優・・・」
これこそ奇跡に近い出来事、
でもそのくらいの気持ちで向かわんと、
戦う前から負けてしまう。
何パーセントでもいい、
勝つチャンスがあるなら
私はそれに賭けて頑張る!!
「そうやね、双葉に勝とう!!」
「うん、勝とう!!」
みんな・・・
紗奈、今の神楽は強いよ?
私たちは双葉学園との試合までスタンドで
他の学校の試合を見ることにした。
そして、スタンドへ向かう途中・・・
あっ!!
私は見てしまった。
宏大と紗奈が一緒にいるところを・・・
私は隠れるように壁に身を隠し、
二人の様子をじっと見ていた。
「宏大・・・」
「紗奈・・・久しぶりやな。」
「うん・・・」
「元気やったか?」
「うん・・・」
久しぶりに会うのか会話が近況報告、
宏大の問いに紗奈は笑顔で答えるだけだ。
けどその笑顔は恋をする乙女の笑顔だった。
「試合頑張れよ。」
「頑張っていいの?」
「えっ!?」
「相手は神楽高校やで?」
「あっ・・・うん・・・」
ちょっと困った顔をする宏大。
「冗談、頑張るよ。」
「お、おう。」
宏大・・・
こんな時は彼女を応援するのが当たり前でしょ?
なんではっきり言わないかな・・・
美優はそう思いながらも少しは
私らのことも考えてくれてる
ような気がして嬉しかった。
「じゃあ、行くね。」
「おう。」
紗奈はもう一度宏大を見て、
ニコッと微笑むと、背を向け歩き出した。
「紗奈!!」
ぎゅっ!!
すると宏大は紗奈の手を掴んだ。
紗奈は驚いたように振り返る。
「紗奈・・・」
「どうしたの?」
紗奈はやさしく笑って宏大を見る。
「えーっと・・・頑張れよ・・・」
「フフッ、うん。」
私はその繫がれた手を見て、
胸がギュッと締め付けられた。
ただ『頑張れよ・・・』としか言ってないのに、
まるで愛の言葉を言ったような、
繫がれた手が愛を確かめ合ってるような、
そんな風に見えたんだ。
私は見てられずに目を背けた。
あの二人・・・
やっぱり強く結ばれてるんだ・・・
私は痛む胸をぐっと押さえた。
「全力で神楽を潰すよ?」
「ああ、その方があいつらも喜ぶ。」
「うん。」
紗奈はニコッと微笑んだ。
「じゃあね。」
「ああ。」
二人は笑顔で手を振ると、
紗奈は背を向け歩き出した。
美優はその場にしゃがみ込んだ。
やっぱり二人の間には入れない・・・
紗奈には勝てない・・・
そんなことを考えていると、
一人の足跡がこっちに向かって来た。
しまった!!
ショックを受けてて
この場を離れるの忘れてた!!
足跡はどんどん近づいてくる。
美優は見つからず通り過ぎてくれることを祈った。
「あれ? 美優?」
「はっ!?」
見つかった!!
顔を上げると紗奈が目の前に立っていた。
「紗奈・・・」
「何してるのこんなとこで?」
「あっ、いや・・・」
美優は焦り目を泳がせた。
「見てた?」
「えっ!?」
「宏大といるところ。」
「え!? ああ・・・」
バレたら仕方ない!!
「ごめん、覗くつもりじゃなかったんだけど、
目に入っちゃって・・・」
「フフッ、別にいいよ。
ただ誰にも言わないで?
私の学校恋愛禁止なんだ。」
紗奈はそう言って願うように手を合わせてた。
「言わないよ、そんなこと!!」
「ありがとう。」
紗奈はホッとしたように笑った。