たった一試合、君と私の甲子園

「あそこにおる、佐久間と
高崎も野球部やで。」


外木場くんが佐久間くんの方を
指差した。



「そうなんやぁ。」


さっき友美に聞いて知ってたけど、
私は話を合わせるように頷いた。


「あいつらとは中学からの仲間で、
ずっと一緒に野球やって来たんや。
そんで高校でも一緒に野球するために
みんなで神楽高校に来た。」


「でもここって野球強くないよね?」


友美が外木場に聞く。


「うん。
でもみんなが一緒に行ける高校が
ここやったから。」


「そうなんやぁ。」


「弱ければ強くしたらええねん。」


大松くんはそう言ってニッと笑った。



頼もしい・・・

なんて頼もしい人なんだ!!


私はそんな大松くんが
すごくカッコよく見えた。



「え~っと・・・
名前は・・・」


外木場くんが友美の顔を覗き込んだ。


「あっ、私!!
佐伯友美です!!」


友美?
緊張して声が裏返ってるよ?(笑)


「私は河西美優。」


「友美ちゃんに美優ちゃん?」


「はいっ!!」


「うん。」


「二人は入る部活決めてるん?」


「う~ん・・・
とりあえずバレー部へとは
思ってるんやけど・・・」


「そうなんや。」


外木場くんはニコッと微笑んだ。




「まぁ、とにかくよろしく。」


「あっ、こちらこそ。」


私たちは握手を交わした。



友美は外木場くんの手に触れ、
気絶寸前だったけど。(笑)



私は高校に入学して
早速新しい友達ができた。



外木場智徳(ソトキバ トモノリ)
野球部で投手。
かなりのイケメン。


大松隆之(オオマツ タカユキ)
野球部で捕手。
体は大きく包容力がある。


高崎義一(タカサキ ヨシカズ)
野球部で遊撃手。
体は小さいが性格は良い。



それにあとは佐久間くん・・・


楽しい高校生活になりそうだ。



私が夢だった楽しい高校生活が
始まるはずだった、
学校帰りは寄り道して、
恋愛して、彼氏を作って・・・
ラブラブの登下校。


楽しい高校生活・・・
のはずだったのに、
私は・・・私は
あんなにしんどい道を
選んでしまうなんて・・・


これもきっとライバルに
出会ってしまったからなんだ。


そう、ライバルに・・・




そして次の日・・・


あれから友美と外木場くん、
大松くんとはいろいろ話せたけど、
佐久間くんとは話ができなかった。


はぁ~・・・
今日は話せるといいなぁ~・・・



そんなことを思いながら登校したけど、
結局今日も話せないまま一日が終わった。



「はぁーっ・・・」


また話せなかったよ・・・


席が遠過ぎるねん!!

はよ席替えせんかなぁ~・・・



「美優っ!!」


すると友美がハイテンションで
話し掛けて来た。


「友美・・・」


「何ため息ついてんの!?」


ニコニコしながら聞いてくる友美。


そりゃそうだ、今日だって
外木場くんと話せたんだから
ご機嫌にきまってる。





「友美、そのテンション
ウザいよ?」


「あらそう?
ごめんあそばせ。」


こいつ・・・

イラつく・・・


私はギロッと友美を睨んだ。



「ちょっと美優、
そんな怖い顔せんといてよぉ~」


誰がさせてんだぁ? ああん!?



「それより野球部の練習
観に行こうよっ!!」


「えっ!?」


「佐久間くんもいるよ?」


佐久間くん・・・

観に行きたい・・・



「あっ!! でもダメだ!!
私、保健委員の仕事で
行かないといけないんだ!!」


「ええっ~マジぃ~?」


何故か私は中学保健委員を
やってたというだけで
保健委員に任命されてしまったのだ。




なんで私が保健委員なんて
せんとあかんのよぉ~・・・

ホンマ最悪!!


そうだ!!


「と、も、みぃ~・・・」


美優はニヤリと笑いながら
友美の名前を呼んだ。



「な、なに・・・!?
その不適な笑いは・・・?」


「委員の仕事手伝って?」


「はぁっ!?」


「いいでしょ?
二人でやって早く済ませれば、
野球部の練習を観に行ける!!」


「嫌っ!!」


「えっ!?」


「絶対に嫌っ!!
それなら私一人で行くっ!!」


「はぁ!? 何それ?」


「それは私の仕事じゃない!!
私一人で練習観て来る!!」


友美はそう言って教室を出ようとしたが、


ガシッ。


美優は友美の手を掴んだ。



「友美ぃ~・・・」


「嫌っ、離してっ!!」


友美は美優の手を
振り払おうとして暴れるが、



「手伝うよね? 友美・・・」


美優はそう言って
目を細くしながらニコッと笑う。


しかし、目の奥が笑っていない・・・



「み、美優・・・?」


「手伝うよね?」


その言った瞬間、
美優の目がパッと開いた、
しかも笑みを浮かべながら。



「は、はい・・・」


「よろしい。」


そして今度は女の子らしい笑顔で
美優はニコッと微笑んだ。



まさに悪魔の女、河西美優。


そして、私と友美は保健室へ
先生の仕事を手伝いに向かった。


「失礼しまーす!!」


「おっ、来たね?
ちょっと棚の整理手伝って。」


「はい。」


保健の先生は若くてスタイルも良く、
とても美人だから、
男子にすごく人気があるらしい。


保健室の先生、鮫島多恵(サメジマ タエ)
年齢は自称25歳だけど、
もう少しいってるような・・・



「もう、なんで私が手伝わないと
いけないのよ!!」


友美が口を尖らしながら
グチグチと文句を言う。


「まぁ、そう言わず。
早く終われば練習が見れるんだから。」


と、友美を言いくるめるが
結局得するのは私だけ。


ごめんね友美。



「こらっ!!
無駄話はしないっ!!」


「す、すいません・・・」


おお~怖いっ!!



すると、ガラガラッと
保健室の扉が開いた。









「先生!! 
ちょっと見てやってください!!」


佐久間くん!?


保健室に入って来たのは
部員を一人背中に背負った
佐久間くんだった。



「ちょっと足を挫いたみたいで。」


佐久間くんはそう言いながら
背負っていた部員を椅子に座らせた。



「外木場くん!!」


えっ!?


足を挫いたのはどうやら
外木場くんのようで、
それにいち早く気付いた友美が
外木場くんの名前を呼んだ。



「あれっ!? 友美ちゃん。」


外木場くんは私たちの方を振り返り
友美の名前を呼んだ。



その時、佐久間くんも一緒に
こっちを振り返った。