「宏大、部活の方はどう?」
「えっ!? ああ、調子ええで。」
「そう。 甲子園は行けそう?」
「さぁなぁ・・・強豪が残ってるからなぁ~」
「そっか。 甲子園行けるとええね?」
「うん。」
「私も応援行くわ。」
「おう。」
宏大はやっと笑ってくれた。
「甲子園って何時なん?」
「ああ、確か8月の8日くらいからちゃうか?」
「そうなん!? で、何時まで?」
「二週間くらいかな?」
「そっか・・・」
「どうした?」
「うん、私、8月は田舎の
おばあちゃんの家に帰るねん。
おばあちゃんのあまり調子良くないから、
いろいろ手伝いを兼ねて。
多分、10日前後から・・・」
「そうなんか・・・」
せっかく宏大が甲子園に出ても
見に行けないかもしれない・・・
美優は悲しそうな表情を見せた。
「一日くらいなんとかなるやろ?」
「えっ!?」
「二週間あるんや、一日くらい
見に来れるやろ?」
宏大・・・
「一日くらいって、ずっと勝ち続けるつもり?」
美優は笑みを浮かべながら問う。
「当然、優勝するわ!!」
「優勝!?」
「もちろんや。」
「大きく出たなぁ?」
「当たり前やろ。」
宏大はフッと笑った。
「おまえが見に来れるまで勝ち続ける、
だから心配せんとばあちゃんとこ行って来い!!」
宏大・・・
「わかった、絶対やで?」
「ああ。」
「約束。」
美優は右の小指を差し出した。
「フッ、ああ。」
宏大は美優の小指に自分の小指を絡ませた。
笑顔で約束を交わす美優と宏大。
「その前に甲子園出場決めてや?」
「そうやったな?」
「フフッ。」
「ははっ。」
宏大との約束・・・
私が見に行けるまで絶対勝ち続けてね?
約束したからね?
街灯の少ない夜道を歩く二人、
満天の星空が二人を見守っているようだった。
約束への第一段階・・・
宏大たしは勝ち進み決勝戦へと駒を進めた。
兵庫県大会決勝!!
強豪北見学園との一戦・・・
決勝戦らしい投手戦となった。
北見学園のエース黒沢新一、
怪物投手と言われ甲子園でも活躍した選手。
その名の通り実力は本物、豪打神楽打線が
8回まで無失点に抑えられた。
対する神楽高校のエース外木場智徳、
彼も県内では黒沢に次ぐ実力ある投手。
春の選抜でも甲子園を沸かせた一人。
外木場も強豪北見打線を8回まで
1失点に抑える好投を見せた。
試合は9回表、0-1で神楽高校は負けている。
この表の攻撃で点が取れなければ
神楽高校は負けてしまう。
しかしここでドラマは待っていた。
一番からの攻撃だった神楽高校は、
一番の高崎がライト前にポテンヒット、
続く二番が送りバントをして、
三番大松がショートへの内野安打。
一死、ランナー一、三塁で
宏大に打席がまわって来た。
宏大にとってライバルの黒沢、
かつての勝負ではほとんど抑えられている。
しかしこの場面は違った・・・
手に汗握るこの対決は宏大が
ファールで粘り第7球目!!
カキーン!!
黒沢の渾身のストレートを
宏大は見事はじき返した。
打球は大きな放物線を描いてレフトスタンドへと
吸い込まれていった。
「「「わぁぁぁぁぁー!!!」」」
9回土壇場で出た宏大の逆転スリーラン!!
球場は揺れんばかりの歓声、
その中をダイヤモンド一周する宏大は
誰よりも輝いていた。
そして北見学園に2点リードで9回裏を迎える。
そして外木場は最終回のマウンドへ・・・
気合の投球で一人、二人と打ち取り、
最後のバッターを・・・
『ストライクバッターアウト!!
ゲームセット!!』
三振で締めた。
「「「わぁぁぁぁぁー!!!」」」
マウンドに駆け寄る神楽ナイン!!
抱き合い喜び、人差し指を天高く突き上げた。
夏の大会初めての栄光を手にした。
『祝!! 神楽高校甲子園出場!!』
学校には大きな垂れ幕が飾られた。
宏大・・・
また一つ約束を果たしてくれたね。
あなたは本当にすごいよ・・・
宏大、おめでとう。
甲子園出場を果たした野球部は休むことなく
甲子園練習へ向けて練習を始めた。
私は用もないのに学校へ行き
野球部の練習をこっそり物陰から眺めていた。
すると、冷水機に向かって宏大が歩いて来る。
宏大・・・
「宏大。」
「おっ、美優。 どうした?」
「うん、ちょっと調べ物があってね。」
「そうか。」
本当は宏大を見に来たんだけどね。
「甲子園出場、おめでとう。」
「おう、サンキュ。」
「本当に実現してしまうんだもんなぁ~
宏大はホントすごい。」
美優は優しい笑みで宏大を見た。
「約束したやろ?
おまえが甲子園見に来れるように、
それまで勝ち続けるって。」
「うん。」
ちゃんと憶えていてくれたんや。
美優は胸の奥があったかくなった。
「まぁ、俺だけの力とちゃうけどな。」
「そうだね。」
「けど、ホームランで決めるなんて、
宏大はホントすごいよ。」
「フッ。」
宏大は嬉しそうに笑った。
「約束への第一歩や、
美優が甲子園来れるように頑張るわ。」
「うん。」
美優は満面の笑みで答えた。
宏大、楽しみにしてるよ、
宏大が甲子園でプレイする姿を見れることを・・・
後日、甲子園の抽選会が行われた。
神楽高校は大会四日目の第三試合。
やっぱり私は見に行くことができないみたい・・・
仕方ないか・・・私が帰ってくるまで
勝ち続けてもらうしかないね。
♪♪♪♪♪
そんな時携帯が鳴った。
宏大・・・
「はい、もしもし?」
「美優か、俺や。」
「うん、どうしたの?」
「悪いなぁ、初戦は四日目になったわ。」
「そうみたいやね。」
「一日目とかやったら見に来れたのになぁ・・・」
「フフッ。 でも勝ち続けてくれるんでょ?」
「もちろん。 一試合じゃなく
二試合見せたろうと思っただけや。」
宏大・・・
「しっかり勝ち続けてよね?
負けたら承知しないんだから!!」
「わかっとう、任せとけ!!」
「うん。」