たった一試合、君と私の甲子園

サーブは双葉学園。
ローテーションで紗奈は前衛にまわった。


サーバーは鈴里。

鈴里のジャンピングサーブが
神楽のコートを襲う!!


バシッ!!


ドライブのかかったサーブを、
友美がなんとか拾う。


そしてセッターが上げて・・・


バシッ!!


美優のバックアタック!!


バチッ!!


「えっ・・・!?」


美優の前に紗奈が立ちはだかった。


紗奈・・・


ポンっ。


紗奈のブロックは見事に決まり、
神楽コートに落ちた。
美優のスパイクは紗奈に阻まれた。


「ナイス紗奈!!」


バチッ!!


紗奈は砂川とハイタッチ。


「紗奈!!」


「紗奈先輩!!」


鈴里や仲田ともハイタッチ。


紗奈のワンプレーで会場はドッと沸いた。


紗奈・・・


完璧に止められた美優、
悔しさを隠しきれず拳を握りしめる。


先制し会場の雰囲気を神楽のものにしたのに、
あっさりと紗奈にひっくり返された。


そして今度は・・・


バチッ!!


「うわっ!!」


もう一人のエース鈴里にも
バックアタックを決められた。



そこから双葉学園の怒涛の攻撃が始まる。


紗奈、鈴里を中心に砂川トスをまわし、
面白いように神楽のコートに突き刺さる。


そして美優のスパイクがブロックを抜けても、
バシッ!!っと、仲田が拾う。
そしてまた決められる。


神楽高校は打つ手を失くしていた。



「やっぱ格が違うよ・・・
紗奈だけでもすごいのに鈴里までいるなんて、
もうどうしようもないよ・・・」


弱音を吐き出す者もいる。


「弱音を吐くな!!
まだ試合は終わってない!!」


そうみんなにゲキを飛ばすが、
力の差を一番感じているのは美優だった。


どうしたらいいのかわからない・・・
けど、戦うしかないんだ。

逃げるなんてしたくない、絶対に!!
美優は必死で戦った。


何度も何度もスパイクを打つ。
しかし紗奈に双葉に止められる・・・


第一セット終わってみれば25-13で
双葉学園の圧勝だった。


そして第二セットが始まる。


みんなの足取りも重い、
そして私も・・・


なんの作戦もないままコートに向かうんだ、
仕方ないことかもしれない・・・


でもこんな感じで、一方的に負けて
終わりたくない・・・

私が頑張って来たことこんな形で・・・
私たちの夏をこんな形で終わらせたくない!!



「みんな!!」


コートに向かうみんなに美優が声を掛ける、
みんなは力なく振り返った。



「声出して行こうよ。」


「えっ・・・?」


「元々格上の相手じゃない、
今更何を落ち込むことがあるの?
負けても仕方がない、勝ったらもうけもの。
そうでしょ?」


「美優・・・」


「だった思いっきりやろうよ!!
負けても思いっきりぶつかって行こうよ!!
私たちが頑張って来た三年間を出していこうよ!!
悪あがきでもなんでもいい、
私たちのすべてを出して行こう?
私たちがやって来たことが無駄にならないように、
この三年間を後悔しないように。」  


「美優・・・」


「そうだね・・・
美優の言うとおりだね。」


「うん、元々敵う相手じゃないもんね・・・」


「なら思いっきりぶつかって行こう!!
少し手こずらせてやろう!!」


「うん。」


「うん。」


みんなの顔に笑顔が戻った。


「よっしゃぁぁー!!
行くでぇぇぇー!!」」


「おぉぉぉぉーっ!!!」


美優の一言で神楽の選手は
一気に元気を取り戻した。



そんな神楽高校のチームを見ていた紗奈から
フッと笑みがこぼれる。


「手強い相手だね。」


砂川が紗奈の隣に来てそう呟くと、


「うん・・・」


と、紗奈は嬉しそうに微笑んだ。



第二セットは双葉学園からのサーブ。


サーバーは紗奈。


紗奈は強烈なジャンピングサーブを
神楽コートに放つ。


バシッ!!


「ああっ!!」


それをレシーブに行った友美は、
強烈なサーブに吹き飛ばされた。


「友美!! 大丈夫!?」


美優たちが友美のそばに駆け寄る。


「ごめん、取り損ねた。
次は絶対拾うから!!」


友美・・・


「うん、頼むよ。」


美優は友美の背中を軽く叩いた。



「よしっ!!まだまだ行くよぉ!!」


「おうっ!!」


神楽高校は格上の双葉学園に向かって行った、
ただがむしゃらに、真っ直ぐに・・・



試合は双葉学園の優位に進むも、
美優の三種類のサーブはまだ威力を持っていた。


美優の揺れるサーブに反応する仲田、
しかし上手く拾えない。


「くそっ!!」


「ドンマイ仲田!! 次だよ!!」


「はいっ!!」


そして4度目の揺れるサーブで・・


バシッ!!


「おおっ!!」


仲田は遂に揺れるサーブを拾った。



「ナイス仲田!!」


そして仲田の拾ったボールを・・・

バシッ!!

紗奈が確実に神楽のコートに叩き込む!!


「よしっ!!」


「やったぁ、紗奈先輩!!」


双葉学園もハイタッチ。


紗奈・・・


美優は喜ぶ双葉のコートをじっと見ていた。


紗奈・・・


あなたに勝ちたくてここまで
頑張って来たけど、
やっぱりあなたの背中は遠い・・・


頑張っても頑張っても、
あなたには勝てない・・・


バレーも、恋も・・・


それでも楽しかった、目標が出来て、
ここまで頑張る事が出来て・・・


紗奈、あなたのおかげ、ありがとう・・・



でも・・・でも・・・


やっぱり悔しい・・・

悔しい・・・


美優は拳を握りしめた。


試合は24-16、
双葉学園マッチポイントを迎えた。


悔しい・・・悔しい・・・


負けたくない・・・


双葉学園からのサーブを友美がレシーブ、
セッターが上げて・・・


悔しい!!

美優のバックアタック!!


バシッ!!


しかし仲田に拾われ砂川が上げる、
そして紗奈の強烈なスパイク!!


「うっ!!」


バシッ!!


友美がなんとかボールに食らいつき手に当てるが、
ボールは大きくコートの外へはじき出される。


負けたくない・・・

紗奈に負けたくない・・・


美優はそのボールを追いかける!!


「美優!! 危ない!!」


負けたくない・・・

私は・・・負けない!!


そして美優はボールに飛びついた!!