とある高校の掃除時間。


わたし、西口りんねは階段の掃除をサボり地面にペタンと座り込んでいた。


わたし一人が頑張って掃除したところで、
綺麗なんかにはならない。
どうせみんなペチャクチャ喋って掃除なんかしていない。

見なくてもわかる。


先生達だって、見てみぬふりでたいしてなにかするわけでもなく。


「暇だー。」


暇なら掃除すればいいのに。
だけどやっぱ、一人だけ真面目にはやりたくない。



こんな感じで、今日の掃除もうだうだ。



「おや?何をしてるんだい?」



「っ?!」



あまりにもびっくりして声がでなかった。

まさか、この時間帯に人がくるなんておもってもいなかった。


いきなり下階段から上ってきた人物は、男。


長身で、サラサラの黒髪がゆれている。



未だに床に座り込んで、何も言わないわたしを見下ろしつづける男。

視線がちくりちくりと刺さって痛い。

わたしの顔、そんなに見入る必要ある?

あ、まさか、怒っているのだろうか?
わたしがこうも堂々と掃除をサボっていることを。

しかし、この男だって同じはず。

自分だってサボってここにいるじゃないか。

わたしだけに怒るなんて理不尽極まりない!

わたしも負けじと男を下から睨もうとした、

時だった。



「よっ、と。」


!!??


「ふぁっ?!」


わたしの体が宙に浮いた

と思ったら、

男に抱きあげられていた。