数日前からいたるところで火災が頻発している。
どれも事故なのか放火なのか分からない。
事故にしてはその原因が見つからず、放火にしてはその痕跡が全く無いのだ。
やがて消防車のサイレンが日常茶飯事に鳴り響くようになった。
そんなある日…。

『このところ各地で頻発している火災について、警視庁が各現場付近で目撃されている男を重要参考人として捜査していたところ、男が徘徊していたB地区で大規模火災が発生した模様です。現場と中継がつながっています。』

テレビの画面がヘリコプターからの航空映像に切り替わった。
B地区のほとんどが真っ赤な炎と黒煙に包まれている。
と、その時、突如地上から火柱がヘリコプターを襲った。
レポーターが悲鳴をあげた直後、映像が途絶える。

(能力者・・・ファクトリーの!!)

たまたま街頭テレビでそのニュースを見ていたナオが走りだした。
ナオがいる場所から、B地区は目と鼻の先だった。
B地区に着くまでに幾多の救急車や逃げ惑う人々とすれ違った。
やがてB地区にたどりついたナオは、その光景を見て足をとめた。
激しく炎上するビルや工場・・・。
いや、建物だけではない。
かけつけていたパトカーや消防車どころか一般の車も、標識や公園・・・この街に存在するありとあらゆる物が炎に包まれている。
ナオの脳裏にある出来事がフラッシュバックする・・・。

――「ナオ・・・。必ず生き延びてくれ・・・。」
辺りが炎に包まれている中、誰かが幼いナオの頬をなでる・・・。

ナオは空を見上げた。
さっきヘリコプターをつつんだ火柱が、天を焦がすかのように盛り立っていた。

「やっと来たな。ハンター、ナオ。」

業火の処刑人ジャック・・・森で保護色使いの男を襲った者こそ、この大規模火災を引き起こした張本人だったのだ。
ジャックは腕から放つ火柱を止めた。

「お前、ファクトリーの能力者だな。」
「ああそうさ。人呼んで業火の処刑人ジャック。」
「処刑人・・・。ってことは重要人物か?」
「もちろん。ファクトリーでも俺ほどの強さをもつやつはそういないぜ。」
「なら・・・知っているはずだ。ファクトリーはどこ?Dr.ガロンはどこにいるの?」
「ガロン様の名を気安く呼ぶな!」

ジャックが右腕から炎を噴き出した。
ナオは咄嗟に着ていたローブで身を守った。
火が燃え移ったローブを脱ぎ捨てる。

「ハンターのナオ、処刑人の名にかけてお前を処刑する!」
「やっとファクトリーの重要人物と会えたんだ。半殺しにしてでもファクトリーの在りかとボスの居場所を聞き出してやる!」
「なめられたもんだなぁ・・・。俺を今までの奴らと一緒にするな!」

ジャックが両手をクロスさせ、そこからまた火炎放射を放った。

「フルチャージ!」

ナオがバズーカからエネルギー弾を撃ちだした。
エネルギー弾はジャックの炎を突っ切り、まっすぐにジャックのほうへ飛んでいく。

「うわ!!」

間一髪のところでジャックはそれをかわした。

(なんだ今のは?さっき放った集中砲火は炎を一点に集中させることで破壊力を生む俺の最大級の技だぞ。それを普通に突っ切ってきやがった・・・。)

「さすがハンターと呼ばれるだけの事はあるみたいだな・・・。だったら俺も本気で行かせてもらうぜ!」

その言葉にナオが構えた。