翌朝・・・。

ショウはとある墓地にやってきた。
手には花を抱えている。
『ミユキの墓』と書かれた墓石の前でしゃがみこみ、花をそなえた。
両手を合わせ、目を閉じる。

ドン!

ショウの後方で、鈍い音とともに墓石が砕ける音がした。
そこには上半身裸の男が立っていた。

「馬鹿だよな人間って。こんなもの作って拝んでよ。んなことしたって死んだやつが帰ってくるわけでもないのによ。まったくくだらんことするよなぁ。笑えるぜ。そうは思わねぇか?兄ちゃん。」

ショウは男を睨み付けた。

「お前も人間じゃねぇか。」
「いや、俺は人間を捨てた。こんな馬鹿げた事をする下等種族と一緒にするな。」
「ふざけるな。墓っていうのはその人が確かに生きていた証だ。その人を必要としていた人がその人を生涯忘れないために作った物だ。」
「だから下等種族なんじゃねえか。弱いやつはそうやって何かにすがることしかできねえ。俺はな、そんなやつらを見てるとむしょうに腹が立つ。そいつらが大事にしているものをぶっ壊したくなる。てめえの後ろのその墓も壊してやろうか?」
「・・・やってみろよ。」



--昨夜の一件で全焼した森の近くには山があった。
その山中で、ナオは剣を抱え、木に寄りかかって眠っていた。

ガサッ!

ふいに物音がした。
ナオがうっすらと目を開ける。
目の前に片目にキズのある男が立っていた。

「いけないねぇ、こんなとこで寝てちゃ。俺みたいな山賊に命を狙われるのがオチだぜ、お嬢ちゃん。」

ナオは再び目を閉じた。

「こいつ、無視してんじゃねえよ!」

男がナオめがけて腕を振り下ろした。
ナオはとっさに剣でそれをふさいだ。
男の両手は鉄のカマに変化していた。

「能力者…。あんた、ファクトリーの人間だな。」
「ああ、そうだ。カマキリの力を得た。カマは鉄製だけどな。この能力で人間を斬り殺し、持ち物ふんだくってるってわけだ。」