「ハア…ハア…ハア…。」

夜の闇が包む暗い森の中、一人の男が走っている。
時折後ろを振り返っている。
どうやら誰かに追われているようだ。

(ここまで来れば見つからないだろう…。)

男は立ち止まった。
かと思うと、男の姿はスーっと消えていった。
その時、男が消えたあたりを炎が襲った。

「熱っ!!アチチチ…!」

男の姿が再び現れた。
どうやらこの男にはカメレオンのような保護色の力があるらしい。
男はもがきながらも再び姿を消した。
そこへ再びどこからか炎が襲ってきた。

「熱い!熱い!」

男は転げ、のたうち回った。
ダメージを受けている間は保護色を使えないのか、今は男の姿をはっきり確認できる。

「めんどくせえなあ…保護色は。」

男に近づいてくる者がいた。
赤いジャケットを着た金髪の青年だ。
男を追っていた人物か。
体から熱気を発しており、その者が歩いたあとの草木は火で焼かれたように焦げている。

「だがよお、そんなもんで俺から逃げ切れるわけがねぇだろ。」

青年はなおも男に歩み寄ってくる。

「保護色のアドルフ。この俺、業火の処刑人ジャックが処刑人の名にかけてお前を処刑する。」
「ひ、ひいぃ!」

男は保護色で姿をくらませ、逃げ出した。

「ほんっとうにめんどくせぇ能力だな。最大火力でいくぜぇ!」

ジャックは体からありったけの炎を発生させた。
まるで大爆発でも起こったかのような巨大な炎が森を包み込んだ。

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

男の悲鳴が響いた。

・・・その時、遠くで森が黒煙をあげていることに気づいた少女がいた。