突然のことに私らしからぬ間抜けな声と顔で咄嗟に声がした右を向いた。

「り、凌くん…?!」

「そうそう、凌くん。久しぶりだなー!」

戸惑う私の目線の先にいたのは、幼い頃を共に過ごした懐かしい姿だった。

彼は花岡凌。
可愛げのあった頃の私を知る数少ない人で、わりかし仲が良かった男の子。

幼なじみ、だ。

もっとも小学校を卒業したのちは親の転勤で引っ越してしまい、会うことはおろか連絡のひとつも交わさなかったけれど。

「なんか…成長したね、良かった良かった!」

「はは、なんだそれ。蒼依は目はでかくなったけど身長は随分ちっさくなったなー!」

「いやいや男子の成長期にはいくらなんでも勝てないからね…あ、」

久々の再開があまりにも嬉しかったせいか、喋りながら興奮ぎみでバッグを横に掛けようとしたら左隣の男にかすってしまった。