くたりとなっている神埼がちょっと可愛いなんて、間違っても思ってないわ、うん。

そんな筈がない。

「…ん、ごちそー様」

「あぁ、うん」

神埼が飲み終わって空っぽになったマグカップを私に渡す。

あ、笑った。

意外と、笑顔が似合う。

…かわいい、かもしれない。

そう思って思わず神埼を凝視していると彼は首をかしげる。
だから、あわてて弁解した。

「や、何でもない」

「そーか?じゃ、俺そろそろ帰るわ。」

「うん」

まぁ隣だけどな、と軽く笑いながらソファから腰を上げる神埼にあわせて、私も軽く伸びをした。

せめて玄関までは見送ってやろう。

神埼に続いて私も廊下に出る。

靴に足を通す神埼の背中にぽつんと別れの挨拶をしてやった。

「じゃ、また。」

「おー。あ、それと…」

「ん?」

靴をはきおわり、玄関から片足を出した神埼が再び振り返って、何かすごく言いたそうにしている。

あぁ、告白とか?

「はっ、自意識過剰。」

おっと、声に出ていたかな。

鼻で笑われるのもなんだかデジャヴだ。

なんとなく口ごもる彼に何なの、とそっけなく訊いた。