家にあげときながら妙な緊張感と気まずさに耐えられなくなった私は、
ソファーにすわる神埼の前にがたん、と多少荒くマグカップをおいた。

「…これは?」

「ホットミルク。知らないの?馬鹿ねー」

まずい、またこの男を挑発するような発言を口走ってしまった。

けれど口から出た言葉は今更戻るはずもなく。

黙ってマグカップを持ち上げて湯気のたつ液体を眺めている神埼から、
いたたまれなくなって体を背ける。

私はいつだって調子に乗って無駄な一言を相手にぶつけてしまう。

それが他の人間からしたら冷たくて、すごく不愉快な思いになる嫌な癖だということは、私にだって痛いほど分かっている。

分かっている、はずなのに。

こうやって反射的に平気で人を苛つかせるのはある意味才能とも言える。

自虐的なことを考えて勝手に凹む私は、相当な自分嫌いだなとしみじみ思う。

頭の中でグルグルと負のスパイラルに陥りそうになった、その時。

「…サンキュ」

柔らかい声と共に、熱いものを啜る喉かな音が私を我にかえした。