剣の放つ鈍い光が空を舞い、激しい音が辺りに響く。



互角の戦い。



一旦互いに飛び退いて、距離をとった。


賊長は忙しなく瞳を動かしている。

おそらく手下の戦況を見ているのだろう。




「―――誰の、依頼だ」

「これから死に逝く貴方様には、その様なこと、必要御座いませんな!!」


「―――私も随分舐められたものだな。生憎だが、そなた等には何も渡さぬ!」




我が命もだ!


ギンッ!!と刃のような光を放つブルーの瞳。

アランは、さっきまでとは比較にならないほどの殺気と覇気を、賊長に向けて放っていた。


それをまともに受けて青ざめた賊長の額から一筋の汗が流れ落ち、軽いおこぼれを受けた馬は大きくいなないて暴れ始めた。


ヒヒーン!!と狂ったように鳴きながら、必死で賊長を振り落とそうとしている。



「チッ、くそっ!このっ、落ち着け!!」



馬同様必死な賊長に、アランは音もなく近付いた。

氷の王子の名に相応しい色を宿した瞳が、賊長を見る。


体勢を崩しながらも繰り出される賊長の剣を、アランはあっさりと避けた。



「悪いが、手加減はせぬ」



賊長の肩から腕にかけ、アランの剣が鈍く煌めいた。



「うぅ、ぐぅ・・・ぅ・・・」



カラン・・と剣が落ち、指先からは血がポタポタと落ちる。

賊長の体は暴れる馬に跳ね飛ばされ、どさり・・と地面に横たわった。


アランは馬から降り、その体に剣先を向けた。

その表情は、無だ。

心の中に潜む恐ろしい銀の龍が、むっくりと頚をもたげ始める。




「起きよ。誰の指示か、申せ」



賊長は呻きながら体を起こし、怪我の部分を押さえた。

ぽたぽたと落ちる血の雫が、次々に地面に吸い込まれていく。

しかし、顔面は蒼白だが、瞳の力は強いままだ。

元は、名のある兵士なのかもしれない。



「――申せ」

「・・・言えませんな」



額から汗を流しながらもニヤリと笑む。

それは、以前エミリーを攫った賊をアランに思い出させた。



―――あの件と、同賊か?



ブルーの瞳に、温度のない光が宿る。




「そうか、言えぬならば―――」


「長ーー!!手をーーー!!」