ギディオン王国に、朝が訪れる。
静かな夜の帳を破るように、夜明けを告げる明け鳥の声が響き渡る。
山の稜線を彩った光は暗色の空を明け色に染め変え、ツンと冷たく澄んだ空気をゆっくりとあたためていく。
街並みに向かって徐々に差し込む光は、雪の残る屋根や木枝を優しく照らし、街中をきらきらとした幻想的な風景にしていた。
白い息を吐きながら、街中を走り回る日刊紙配達の足元もだんだんに明るくなり、刊紙を投げ込む腕も足取りも軽やかになる。
日が昇るのに比例し、次第に家々からカタコトと物音がしはじめ、日刊紙を取りに出た住人達が交わす朝の挨拶もあちらこちらから聞こえ始めた。
雲の少ない爽やかな朝。
街中が賑やかになり、皆が活動を始める、一日の始まりだ。
そして同じ頃、この国の政務の要ギディオン城でも、一日が始まろうとしていた。
城門や各塔の出入り口など、各要所で兵士達の警備交替の声が高らかに響く。
定刻にされるそれは、城の一日の始まりの合図でもあった。
凛と響きわたる声に呼応するように、出勤してきた使用人とメイドたちの姿はどんどん増えていき、城庭の中心を通る馬車道は賑やかな声で一杯になる。
談笑しながら歩く皆の声は明るく、とても平和な朝だ。
いつも通りの光景。
国中が静から動へと変わる、今は、そんな時間。
「じゃ、また後でね」
「今日も頑張ろうね。じゃ、休憩時間にね!」
「うん、頑張る!」
まだ新人なのだろうか、メイド服も真新しい年若のメイドたちが三人、互いに励まし合うように言葉かけして手を振っている。
この娘たちだけでなく皆も笑顔で手を振り挨拶を交わすのは、分かれ道。
各々が向かう配属先は、大きく3か所に分かれていた。
この国の政務の要であり最も城門に近い場所に位置する『政務塔』
城門から向かって右方面に位置するのが、王の住まう『王の塔』
そして、城門より左方面、このギディオン城の中で最も奥に位置するのが、この国の王子の住まう『世継ぎ王子の塔』通称『アランの塔』
ここは、どこよりも警備と規律が厳しいといわれている場所であり、配属された使用人やメイドが最も気遣う場所である。
冷たく厳しく威厳たっぷりで、目を合わせるのも怖ろしいと評判の氷の王子様が塔の主。
先程“頑張る”と言っていた年若いメイドの配属先でもある、小さな失敗も許されない程の緊張感に満ちたところだ。
そんな塔の主である、アラン王子はといえば――――
静かな夜の帳を破るように、夜明けを告げる明け鳥の声が響き渡る。
山の稜線を彩った光は暗色の空を明け色に染め変え、ツンと冷たく澄んだ空気をゆっくりとあたためていく。
街並みに向かって徐々に差し込む光は、雪の残る屋根や木枝を優しく照らし、街中をきらきらとした幻想的な風景にしていた。
白い息を吐きながら、街中を走り回る日刊紙配達の足元もだんだんに明るくなり、刊紙を投げ込む腕も足取りも軽やかになる。
日が昇るのに比例し、次第に家々からカタコトと物音がしはじめ、日刊紙を取りに出た住人達が交わす朝の挨拶もあちらこちらから聞こえ始めた。
雲の少ない爽やかな朝。
街中が賑やかになり、皆が活動を始める、一日の始まりだ。
そして同じ頃、この国の政務の要ギディオン城でも、一日が始まろうとしていた。
城門や各塔の出入り口など、各要所で兵士達の警備交替の声が高らかに響く。
定刻にされるそれは、城の一日の始まりの合図でもあった。
凛と響きわたる声に呼応するように、出勤してきた使用人とメイドたちの姿はどんどん増えていき、城庭の中心を通る馬車道は賑やかな声で一杯になる。
談笑しながら歩く皆の声は明るく、とても平和な朝だ。
いつも通りの光景。
国中が静から動へと変わる、今は、そんな時間。
「じゃ、また後でね」
「今日も頑張ろうね。じゃ、休憩時間にね!」
「うん、頑張る!」
まだ新人なのだろうか、メイド服も真新しい年若のメイドたちが三人、互いに励まし合うように言葉かけして手を振っている。
この娘たちだけでなく皆も笑顔で手を振り挨拶を交わすのは、分かれ道。
各々が向かう配属先は、大きく3か所に分かれていた。
この国の政務の要であり最も城門に近い場所に位置する『政務塔』
城門から向かって右方面に位置するのが、王の住まう『王の塔』
そして、城門より左方面、このギディオン城の中で最も奥に位置するのが、この国の王子の住まう『世継ぎ王子の塔』通称『アランの塔』
ここは、どこよりも警備と規律が厳しいといわれている場所であり、配属された使用人やメイドが最も気遣う場所である。
冷たく厳しく威厳たっぷりで、目を合わせるのも怖ろしいと評判の氷の王子様が塔の主。
先程“頑張る”と言っていた年若いメイドの配属先でもある、小さな失敗も許されない程の緊張感に満ちたところだ。
そんな塔の主である、アラン王子はといえば――――