そのあとすぐ、塔1階の食堂で夕食をとる二人の姿があった。
今日一日の出来事を話すエミリーの甘やかな声に、相槌を打つアランの美声が重なる。
たまに笑い声を立てながら話す様子は愛らしく、アランにはキラキラと眩しく映り、自然に瞳と頬が緩む。
食が進み、日々仕事に追われるアランはもちろん、給仕までもが癒されてしまう穏やかなひと時、いつも通りの光景だ。
料理長のふくよかな腕を振るった夕食メニューを美味しく平らげ、最後のデザートが出されれば、アランから人払いの合図を受けた給仕たちが素早く下っていく。
「それでね、ご婦人方の作ってるものを見せていただいたの。それが、とても細かくてお上手で。わたしが欲しくなってしまうくらいに、とてもすばらしいの。アラン様は、刺繍の壁飾りを見たことありますか?」
「・・・母君のなら、あるぞ。完成の度に持ってくるのだ。感想も求められるゆえに、これでも見る目は養われておる」
「お義母さまの・・・わたしも見せていただきたいわ。今日は、とても忙しそうだったもの。急な来客があったのでしょう?」
「・・・あぁ。そのようだな」
アランは来客のことはよく知らないらしく、一瞬だけ珈琲を飲む手を止めて考えたようだけれど、それきり何も言わない。
貴賓館まで迎えに来てくれた理由は、別にある感じ?
「え・・っと?」
とても不思議に思ってハテナマークがたくさん頭の中に浮かぶけれど、エミリーには、それ以上アランから情報を聞き出せる腕も術も持ってない。
首を傾げたまま見つめていると、「何だ?」と優しく返してくれる。
けれど、何も言葉が出てこない。
とりあえず次に聞きたいことを出さないと、もうすぐ食事の時間が終わってしまいそう。
明日にしてもいいけれど、明日は明日で話すことがたくさんできるのだ。
焦るエミリー。
「え・・・あ、あの、アラン様?それから先生が、今計画中のことを、こっそり教えてくださったのですけど・・・」
「ん?計画とは・・・申してみよ」
細まったアランの瞳がキラリと光り、組んだ手をテーブルの上に置いた姿勢は身構えたような感じ。
何だかいつになく迫力があって、気後れしてしまう。
「えっと、生徒さんが作った作品を集めて展示して、一般の方々に公開するの。とてもすばらしい作品がみられるわ。そうしたら、わたしも、見に行ってみたいのですけれど・・・」
「ん・・・展示を、か―――それは、一般なのだな?」
「はい。きっとお城の外の会場だとおもいます。あの、だめですか?」
「・・・っ、そうだな・・・時期にもよるが・・考えておこう」
今日一日の出来事を話すエミリーの甘やかな声に、相槌を打つアランの美声が重なる。
たまに笑い声を立てながら話す様子は愛らしく、アランにはキラキラと眩しく映り、自然に瞳と頬が緩む。
食が進み、日々仕事に追われるアランはもちろん、給仕までもが癒されてしまう穏やかなひと時、いつも通りの光景だ。
料理長のふくよかな腕を振るった夕食メニューを美味しく平らげ、最後のデザートが出されれば、アランから人払いの合図を受けた給仕たちが素早く下っていく。
「それでね、ご婦人方の作ってるものを見せていただいたの。それが、とても細かくてお上手で。わたしが欲しくなってしまうくらいに、とてもすばらしいの。アラン様は、刺繍の壁飾りを見たことありますか?」
「・・・母君のなら、あるぞ。完成の度に持ってくるのだ。感想も求められるゆえに、これでも見る目は養われておる」
「お義母さまの・・・わたしも見せていただきたいわ。今日は、とても忙しそうだったもの。急な来客があったのでしょう?」
「・・・あぁ。そのようだな」
アランは来客のことはよく知らないらしく、一瞬だけ珈琲を飲む手を止めて考えたようだけれど、それきり何も言わない。
貴賓館まで迎えに来てくれた理由は、別にある感じ?
「え・・っと?」
とても不思議に思ってハテナマークがたくさん頭の中に浮かぶけれど、エミリーには、それ以上アランから情報を聞き出せる腕も術も持ってない。
首を傾げたまま見つめていると、「何だ?」と優しく返してくれる。
けれど、何も言葉が出てこない。
とりあえず次に聞きたいことを出さないと、もうすぐ食事の時間が終わってしまいそう。
明日にしてもいいけれど、明日は明日で話すことがたくさんできるのだ。
焦るエミリー。
「え・・・あ、あの、アラン様?それから先生が、今計画中のことを、こっそり教えてくださったのですけど・・・」
「ん?計画とは・・・申してみよ」
細まったアランの瞳がキラリと光り、組んだ手をテーブルの上に置いた姿勢は身構えたような感じ。
何だかいつになく迫力があって、気後れしてしまう。
「えっと、生徒さんが作った作品を集めて展示して、一般の方々に公開するの。とてもすばらしい作品がみられるわ。そうしたら、わたしも、見に行ってみたいのですけれど・・・」
「ん・・・展示を、か―――それは、一般なのだな?」
「はい。きっとお城の外の会場だとおもいます。あの、だめですか?」
「・・・っ、そうだな・・・時期にもよるが・・考えておこう」