でも・・・と、すぐに考え直した。
それにしては、服装がおかしいのだ。
女の子が身に着けているのは、真っ直ぐなデザインの裾まである薄手のドレスで、とても城を訪問するような姿ではない。
そう、例えるなら、簡素なナイトドレスのような―――
空を仰ぎ見ていたその子は、エミリーに気付くと、目を見開いた後すぐに、す・・と膝を折った。
その仕草はとても優美で、服装に見合ったものではない様に思える。
きちんと教育を受けているような感じだ。
もしかしたら、新人メイドなのかもしれない。
けれど―――
「こんにちは。えっと・・・もしかしたら、迷子ですか?」
あまりに不思議な感じがして、変な質問になってしまった。
女の子の髪色は桃色がかったベージュ色で、瞳は薄青い。
メイの空色の瞳とは、また少し違った薄さ。
この国の子なのだろうか。
「いいえ、違います。王子妃様。少し、外の空気を吸いたくて、抜け出して来てしまったのです」
「え?・・・抜け出してって、どこからですか?」
「医務室、ですわ」
「病気静養中なのですか?ならば、早く戻ってください。フランクさんは、ここにいることを知らないのでしょう?」
女の子は少し瞳を伏せて微笑んだ後、エミリーの質問に答えることなく、再び空を見上げた。
「・・・ここの空は、綺麗なのですね」
「空ですか―――そうですね、わたしも、ここの空は好きです」
そのしみじみとした物言いに、エミリーもつられて仰ぎ見た。
毎日色んな表情を見せるギディオンの空。
確かに、今日の空は綺麗で、春が近いからか、冬に見ていたそれよりも青色が濃い。
・・・ちりんちりん・・・シャルルが紐を引っ張って、動くことを要求してくる。
「ニャー」
「待って。シャルル、引っ張らないで。紐が外れてしまうわ」
鈴の音とエミリーの窘める声を聞いて、ようやくその存在に気付いた様子の女の子は、座り込んで嬉しげな声を上げた。
「まぁ!可愛い猫!毛並みもよろしくて、艶々ですわ。良く手入れをなさっているのですね」
「えぇ、ありがとう――あなたは、大丈夫なのですね?」
「大丈夫って、何が・・・あ、そうですわね。えぇ、もちろん、猫は好きです」
そう言いながら、小さな頭をひたすらに撫でている。
自分に警戒心を持つ人には敏感なシャルルが、大人しく身を任せている。
どうやら、この子は、本当に猫が好きなよう。
「あら・・・見つかってしまったみたい」
顔を曇らせた女の子が立ちあがって、ス・・と膝を折った。
「王子妃様、失礼致します。医務室に戻りますわ」
「えぇ、そのほうがいいわ。お大事にしてください」
女の子が歩いていく方に、リードが走っているのが見えた。
「何なのですか貴女はっ。勝手に外に出ないで下さい」
ぶっきらぼうに渡された上着を羽織り、女の子は、ぶつぶつと小言を言うリードと一緒に、政務塔に戻って行った。
それにしては、服装がおかしいのだ。
女の子が身に着けているのは、真っ直ぐなデザインの裾まである薄手のドレスで、とても城を訪問するような姿ではない。
そう、例えるなら、簡素なナイトドレスのような―――
空を仰ぎ見ていたその子は、エミリーに気付くと、目を見開いた後すぐに、す・・と膝を折った。
その仕草はとても優美で、服装に見合ったものではない様に思える。
きちんと教育を受けているような感じだ。
もしかしたら、新人メイドなのかもしれない。
けれど―――
「こんにちは。えっと・・・もしかしたら、迷子ですか?」
あまりに不思議な感じがして、変な質問になってしまった。
女の子の髪色は桃色がかったベージュ色で、瞳は薄青い。
メイの空色の瞳とは、また少し違った薄さ。
この国の子なのだろうか。
「いいえ、違います。王子妃様。少し、外の空気を吸いたくて、抜け出して来てしまったのです」
「え?・・・抜け出してって、どこからですか?」
「医務室、ですわ」
「病気静養中なのですか?ならば、早く戻ってください。フランクさんは、ここにいることを知らないのでしょう?」
女の子は少し瞳を伏せて微笑んだ後、エミリーの質問に答えることなく、再び空を見上げた。
「・・・ここの空は、綺麗なのですね」
「空ですか―――そうですね、わたしも、ここの空は好きです」
そのしみじみとした物言いに、エミリーもつられて仰ぎ見た。
毎日色んな表情を見せるギディオンの空。
確かに、今日の空は綺麗で、春が近いからか、冬に見ていたそれよりも青色が濃い。
・・・ちりんちりん・・・シャルルが紐を引っ張って、動くことを要求してくる。
「ニャー」
「待って。シャルル、引っ張らないで。紐が外れてしまうわ」
鈴の音とエミリーの窘める声を聞いて、ようやくその存在に気付いた様子の女の子は、座り込んで嬉しげな声を上げた。
「まぁ!可愛い猫!毛並みもよろしくて、艶々ですわ。良く手入れをなさっているのですね」
「えぇ、ありがとう――あなたは、大丈夫なのですね?」
「大丈夫って、何が・・・あ、そうですわね。えぇ、もちろん、猫は好きです」
そう言いながら、小さな頭をひたすらに撫でている。
自分に警戒心を持つ人には敏感なシャルルが、大人しく身を任せている。
どうやら、この子は、本当に猫が好きなよう。
「あら・・・見つかってしまったみたい」
顔を曇らせた女の子が立ちあがって、ス・・と膝を折った。
「王子妃様、失礼致します。医務室に戻りますわ」
「えぇ、そのほうがいいわ。お大事にしてください」
女の子が歩いていく方に、リードが走っているのが見えた。
「何なのですか貴女はっ。勝手に外に出ないで下さい」
ぶっきらぼうに渡された上着を羽織り、女の子は、ぶつぶつと小言を言うリードと一緒に、政務塔に戻って行った。