「あらあらまぁまぁ。私たち、貴女様のことは誰だかよく存じ上げておりますのよ」
「あぁほら、皇后様。早く私共を紹介して下さいな。この可愛いお方が戸惑っておられますわ」
「まあそうですわね、私としたことが。これでは段取りが悪いとアランに叱られてしまいますわね・・・ねぇエミリーさん?このことは内緒にしててくださいな」
皇后は人差し指を唇にあてて可愛らしくウィンクをして見せた後にコロコロと笑い「こちらのお方は」と一人一人順番に紹介していった。
三人のご婦人は其々が違う地域に住まい、御主人は役を任じているそう。
一人若いご令嬢は細身のご婦人の知り合いの娘。
そして、年配に見えたご婦人はただ一人一般の民で、刺繍の先生だと言った。
エミリーが頭の片隅でちょっぴり気にしていた御三家の奥方たちは参加していなくて、本当に皇后の仲の良い方だけの集まりのよう。
優しそうな方ばかりに思えて、ホッと胸をなでおろしていると「さぁ皆さま早速始めましょうか」と、皆持参した道具をいそいそと出し始めた。
其々が作っているのは、小さなサイズの壁飾り。
ふくよかな婦人の住む地域で開催されるチャリティバザーに出品するのだそうで、小さいながらも絵柄が凝っていて、時々お喋りをしながらもちくちくと針を刺す様子は、結構皆真剣だ。
エミリーも先生にお願いして、壁飾り用の図案を見せて貰った。
出来あがり図の絵は色彩豊かでどれも綺麗で、おまけに細かくて。
アランの紋章を断念した経験のある初心者なエミリーには、どれもこれも、とても難しそうに思える。
「もっとかんたんなものは、ないですか?」
そうお願いすると、先生は「そうですわねぇ、王子妃様には、お花だけのがよろしいかしら・・」と言いながら図案の紙を、がさごそと探し始めた。
「ところで皇后様。今回はどうして貴賓館になさったのですの?」
ふくよかな婦人がふと手を止めて、いつもは、王の塔でなさるのに、珍しいですわね?と言って、皇后の方を見た。
「えぇ、実は昨夜急にアランから要望がありましたの。“今度の趣味の会は貴賓館でお願いしたい”と。我が息子ながらも、怖いくらいに真剣な眼差しで。何故かと聞きましたけれど、理由は申しませんのよ。けれど、恐らくきっとエミリーさんのためであろうと思っておりますわ」
「え?・・・わたしのため、ですか?」
「えぇ、それしか考えられませんわ。アランの思考の半分は国、半分はエミリーさんで成り立っておりますもの。いえ、もしかしたら半分以上はエミリーさんで占められているかもしれませんわね?」
皇后がコロコロと笑っていると、ノック音が響いて、髭の侍従長が小声で「失礼致します」と言って、顔を出した。
何だか皇后に用事があるようで、遠慮がちな感じで手招きをしている。
「あぁほら、皇后様。早く私共を紹介して下さいな。この可愛いお方が戸惑っておられますわ」
「まあそうですわね、私としたことが。これでは段取りが悪いとアランに叱られてしまいますわね・・・ねぇエミリーさん?このことは内緒にしててくださいな」
皇后は人差し指を唇にあてて可愛らしくウィンクをして見せた後にコロコロと笑い「こちらのお方は」と一人一人順番に紹介していった。
三人のご婦人は其々が違う地域に住まい、御主人は役を任じているそう。
一人若いご令嬢は細身のご婦人の知り合いの娘。
そして、年配に見えたご婦人はただ一人一般の民で、刺繍の先生だと言った。
エミリーが頭の片隅でちょっぴり気にしていた御三家の奥方たちは参加していなくて、本当に皇后の仲の良い方だけの集まりのよう。
優しそうな方ばかりに思えて、ホッと胸をなでおろしていると「さぁ皆さま早速始めましょうか」と、皆持参した道具をいそいそと出し始めた。
其々が作っているのは、小さなサイズの壁飾り。
ふくよかな婦人の住む地域で開催されるチャリティバザーに出品するのだそうで、小さいながらも絵柄が凝っていて、時々お喋りをしながらもちくちくと針を刺す様子は、結構皆真剣だ。
エミリーも先生にお願いして、壁飾り用の図案を見せて貰った。
出来あがり図の絵は色彩豊かでどれも綺麗で、おまけに細かくて。
アランの紋章を断念した経験のある初心者なエミリーには、どれもこれも、とても難しそうに思える。
「もっとかんたんなものは、ないですか?」
そうお願いすると、先生は「そうですわねぇ、王子妃様には、お花だけのがよろしいかしら・・」と言いながら図案の紙を、がさごそと探し始めた。
「ところで皇后様。今回はどうして貴賓館になさったのですの?」
ふくよかな婦人がふと手を止めて、いつもは、王の塔でなさるのに、珍しいですわね?と言って、皇后の方を見た。
「えぇ、実は昨夜急にアランから要望がありましたの。“今度の趣味の会は貴賓館でお願いしたい”と。我が息子ながらも、怖いくらいに真剣な眼差しで。何故かと聞きましたけれど、理由は申しませんのよ。けれど、恐らくきっとエミリーさんのためであろうと思っておりますわ」
「え?・・・わたしのため、ですか?」
「えぇ、それしか考えられませんわ。アランの思考の半分は国、半分はエミリーさんで成り立っておりますもの。いえ、もしかしたら半分以上はエミリーさんで占められているかもしれませんわね?」
皇后がコロコロと笑っていると、ノック音が響いて、髭の侍従長が小声で「失礼致します」と言って、顔を出した。
何だか皇后に用事があるようで、遠慮がちな感じで手招きをしている。